追想~Ⅰ・Hさん~
5年前に初めて訪問している。
いつもゆったり穏やかに話をするIさん。
やってることはメチャクチャで当たり前の指導は通用しない。
人はこんな検査データでも生きていけるんだ。
この人に正常値は通用しない。何度でも復活出来る人なんだと思った。
今回も「退院します」と連絡が来るかもしれないと思っていたけど違った。
やっぱり限界だった。入院中に自分も担当者も過去に何度か面会に行っている。
でも今回は面会出来なかった。どこの病院も面会は出来ない。家族でさえ入れない。
感染者ではないけれど部外者は入れない。
人手不足の時、「無理しなくていいよ。休んでる?」と声をかけてくれたIさん。
予定通りに訪問出来ない時は変更させてもらうことが一番多かった。優しさに沢山甘えてしまった。
それなのに、最後に掛けた言葉は「こうなることがわかって退院してきたんでしょ」と冷たい言葉だった。
最後に「ありがとう」と言えなかった。
最期の時は少しでもみんなが満足できる時間を持ってもらいたい。いつもそう思っている。
後悔が少しでも減る様に。
<ふうりん>
2020年5月16日